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  3. アサーティブ・コミュニケーションで職場関係を円滑にする方法
会話をする男女

相手も自分も大切にする第3の話し方

職場の人間関係において、自分の意見を主張することに難しさを感じている人は少なくありません。
言いたいことを飲み込んでストレスを溜め込む受動的なタイプか、あるいは自分の意見を通そうとする攻撃的なタイプのどちらかに偏ってしまいがちです。

しかし、ビジネスの現場で求められるのは、そのどちらでもないアサーティブ・コミュニケーションという第3の話し方です。
自分自身の考えや感情を率直に、そして誠実に表現しながらも、同時に相手の立場や意見も尊重するコミュニケーションスタイルのことを指します。

単に言いたいことを言うのとは異なり、相手を傷つけずに、かつ自分も我慢しないという、相互尊重の精神が土台にあるのが最大の特徴です。

なぜ今、この手法が注目されているのでしょうか。
それは、多様な価値観を持つ人々が働く現代の職場において、一方的な命令や過度な忖度が組織のパフォーマンスを低下させることが明らかになってきたからです。

自分の意見を後回しにして相手に合わせすぎることは、一見すると協調性があるように見えますが、長期的には不満が蓄積し、メンタルヘルス不調の原因にもなりかねません。
逆に、相手の事情を考慮せずに正論だけを押し付ける態度は、周囲との摩擦を生み、パワハラと受け取られるリスクすらあります。

アサーティブな態度を身につけることは、こうした極端なコミュニケーションの罠を避け、健全で風通しの良い職場環境を作るための必須スキルといえるのです。
自他尊重のバランス感覚を持つことで、対立を恐れずに建設的な議論ができるようになり、結果として仕事の質も向上していくでしょう。

上司・部下間の実践的な伝え方

アサーティブ・コミュニケーションを実際の業務で活用するには、まず、状況を客観的に描写し、自分の気持ちを伝える必要があります。
そして解決策を提案し、相手の反応に対する選択肢を用意するというステップを踏むことが大切です。

例えば、上司から急な仕事を頼まれたが、手持ちの業務が手一杯で断りたいというシチュエーションを想像してみてください。

ただ「無理です」と断るのは角が立ちますし、「わかりました」と無理に引き受けるのはイエスマン的な対応で、後々自分の首を絞めることになります。

アサーティブに伝えるなら、「まず現在、A社の案件の締め切りが明日に迫っています」と客観的な状況(事実)を伝えます。
そのうえで、「そのため、ご依頼の件を今日中に引き受けることは難しい状況です」と率直な現状を述べます。

そして、「明日の午後からであれば着手可能ですが、いかがでしょうか」と代替案を提示するのです。

このように、相手の依頼自体を拒絶するのではなく、条件の調整を提案することで、上司も状況を理解しやすくなり、建設的な対話へと繋がります。

逆に、上司が部下にミスを指摘する場合にもこの技術は役立ちます。
感情的に「なんでこんなミスをするんだ」と怒鳴るのは攻撃的であり、パワハラになりかねません。

アサーティブな上司であれば、「報告書のこの数字が間違っていたよ」と事実だけをまず指摘します。

続けて「この数字が違うと、クライアントに迷惑がかかるので私は心配している」と、主語を私にして感情や影響を伝えます。
そして次は「提出前にダブルチェックをお願いできるかな」と具体的な行動を提案します。

相手の人格を否定するのではなく、起きた事象と今後の行動に焦点を当てることで、部下は委縮することなく、前向きに改善に取り組めるようになります。

立場が上であっても下であっても、相手を一人の人間として対等に扱い、誠実に言葉を選ぶ姿勢こそが、信頼関係を深める鍵となるのです。

職場に信頼と成果をもたらすための心の持ち方

アサーティブ・コミュニケーションを定着させるためには、その根底にあるマインドセットを整えることが欠かせません。

重要なのは、自分の意見を表現する権利があると認識すること、そして同時に相手にも同じ権利があると認めることです。

意見の食い違いは、必ずどちらかが間違っているというわけではありません。
異なる視点を持っているという事実に過ぎず、それを調整していくプロセスこそがコミュニケーションの本質です。

自分の意見が通らなかったとしても、それはあなたが否定されたわけではなく、今回はその提案が採用されなかったというだけの話です。

また、アサーティブであることは、常に自分の要求を通すことではありません。
時には譲歩したり、相手の意見を優先したりすることも立派な選択です。

自分の行動に責任を持つことで、被害者意識を持たず、健全な精神状態で仕事に向き合えるようになります。

職場全体にこのようなアサーティブな空気が広がれば、誰しもが安心して発言できる心理的安全性の高い組織へと成長できるでしょう。

今日からできる小さな一歩として、まずは身近な人に対して、感謝の言葉やちょっとしたお願い事を、素直な言葉で伝えてみてはいかがでしょうか。